SIerの工数見積もりは前提条件が命綱
SIerの業務においては納品後に問題が発覚し、最悪の場合、賠償責任を問われる可能性があります。
そんなリスクを抱えているSIerにとって案件を受注してから自分たちの身を守れるものはたった2つしかありません。
それは工数見積もりの前提条件と構築後のテストです。この2つは最悪の事態からSIerの身を守る「命綱」ともいえる存在です。
しかしながら、この2つを疎かにしているSIerは少なくありません。
〇〇製品のシステム構築という案件があったとして前提条件によって作業内容は大きく変わります。
前提条件で定義すべき内容の一例としては下記のようなものですが多岐に渡ります。
・構築するシステム範囲や構築する要件など
・顧客が用意する/SIer側が用意するリソース、ライセンス、環境など
・作業時間の制約、打合せの場所、回数、議事録作成の有無など
・納品物に関する制約など
・引継ぎ内容など
工数見積もりの精度は前提条件の正確さに比例します。
この前提条件が不十分だと想定外の作業が多発したり、調達が必要なものの納品が遅れたり、実作業が進むにつれて見積もりと実態の工数に乖離が発生したりします。
受注後の設計、構築、テスト、納品物作成、引継ぎ作業をしっかりと想定し、抜け漏れがないように細心の注意を払いましょう。
また、システムを導入する際には既存環境への影響を考慮し、万が一に備えてお客様に作業前のバックアップと万が一の際にはお客様にリストアいただく必要があることを前提条件として明記します。
このようにお客様とSIer側の作業と責任をきちんと明確にしておくことが重要です。
受注前段階では多くのSIerが良いことばかりを話す傾向にありますが、受注後のトラブルおよびフィット&ギャップを無くすためにも前提条件はお客様にもしっかりとご理解いただくことが重要です。
重要なことを十分に説明せず、受注後には「見積もり前提条件に記載されていますから」という対応をしていてはお客様の信頼を一気に失い、その後の案件受注は難しくなるでしょう。
ここまででSIerの工数見積もりは前提条件がとても大切であるということをお話してきました。
決して前提条件を書くことでSIerがリスクを被らなくて良くなると言っているのではありません。
必要な前提条件を漏れなく重複なく簡潔に記載するのもSIerの力量の1つです。前提条件を正しく設定することでプロジェクトそのものが円滑に遂行でき、成功確率が格段に上がります。
これまであまり前提条件を意識してこなかったSIer様はこの機会に汎用的な前提条件の作成について検討いただければと思います。