サーバントリーダーシップの2つの落とし穴

マネージャーとしてメンバーを管理するための手法はいくつもありますが、サーバントリーダーシップというのを聞いたことはあるでしょうか。
サーバント(servant)とは「奉仕者」や「召使い」という意味の言葉でマネージャーがメンバーに奉仕し、メンバーの力で成果を最大限にしようというものです。
マネージャーがメンバーに一方的に指示、命令を出す支配型のリーダーシップでは成り立たないケースが増えており、その代わりとして台頭してきた管理手法です。

終身雇用が主流だった時代には、従業員は長期間に渡って同じ企業に勤め、昇進や昇給が見込むことができたため、マネージャーや上司の指示に従うことが当たり前でした。
終身雇用が保障されなくなった現代においては、マネージャーや上司の指示に無条件に従うのではなく、自分のキャリアや価値観に合致するかを判断するようになりました。
サーバントリーダーシップが注目されているのにはこうした背景も関係がないとは言えないと思います。

以前の投稿で、マネージャーはスーパーマンを目指すのではなく、メンバーが出来る仕事はメンバーに任せ、自身はメンバーのために上記のようなフォローに回る、あるいはメンバーでは困難な業務に回るということを意識していただきたいとお伝えしてきました。
メンバーの意見に傾聴し、共感し、気付きを与え、メンバー自身で成し遂げられるようにサポートする、そのこと自体は大変素晴らしいもので私自身もおすすめしているマネジメントです。
しかしながらサーバントリーダーシップには気を付けていただきたい2つの落とし穴があります。

1つ目の落とし穴は責任の所在です。
いかにメンバー主体で判断し、自主的に仕事を進めてくれていたとしてもチームの最終的な責任者はあくまでもマネージャーです。
「召使い」の気分でいるマネージャーに責任を負う気概が期待できるでしょうか。
マネージャーは「召使い」や「奉仕者」などではなく、「チームの成功を導く責任者」であり、時には強いリーダーシップと難しい局面で意思決定をする覚悟が求められます。
責任を逃れるために奉仕的な態度を取るのではなく、むしろメンバーのために積極的に責任を引き受けなければならない立場です。

2つ目の落とし穴はメンバー全員に同じ手法が通用しないということです。
自らに考え、行動ができる一部の自律したメンバーにとってはサーバントリーダーシップは良く機能すると思いますが、そのようなメンバーは半数に満たないのが通常ではないでしょうか。
経験が浅いメンバー、自ら考える習慣が身に付いていないメンバーなどには必要に応じて方向性を示したり、具体的な指示を与える必要があるのです。
決してこれらのメンバーの成長を諦めろということではありません。メンバーが成長できるように見守りつつ、フォローをするということです。

ここまででサーバントリーダーシップについて気を付けていただきたい2つの落とし穴についてお話しました。
この投稿はサーバントリーダーシップ自体を否定するものではありません。むしろ現代のマネジメントとしては従来のメンバーに一方的に指示、命令を出す支配型のリーダーシップよりも数段優れていると思います。
マネージャーの皆さんにはサーバントリーダーシップの良い面と悪い面を理解した上でマネジメントしていただきたいと思います。

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