情シスマネージャーのためのチームマネジメントのコツ
情報システム部門のマネージャーは技術的な知識だけではなくチーム全体のマネジメント能力も求められます。
しかし、日々の業務に追われる中で効果的なチーム運営に悩んでおられるマネージャーの方が少なくありません。
IPAが発行した「DX動向2024-深刻化するDXを推進する人材不足と課題」の中でDXを推進する人材が「大幅に不足している」と回答した企業が2021年度の調査では30.6%であったものの2023年度の調査では62.1%に倍増しています。
そんな人材不足で忙しい情報システム部門を効率的にマネジメントするために実践いただきたい4つのルール、仕組み化についてご紹介します。
- エスカレーションルールの明確化
- 脆弱性管理方法の明確化
- 目標とKPIの明確化
- メンバー育成の明確化
1. エスカレーションルールの明確化
問題が発生した際のエスカレーションルールを明確にしましょう。
メンバーによってエスカレーションする基準や内容が異なると対応が遅れたり、無駄な時間が発生し、問題解決に時間がかかってしまいます。
問題の深刻度に応じてエスカレーションする内容を予め定義しておくことで問題解決を効率的に実施することができます。
特にエスカレーション方法はメールやチャットツールなどで広範囲に一斉に通知することでチーム間や関係部門への連携漏れを防ぐことが可能になります。
2. 脆弱性管理方法の明確化
情報システム部門においてはセキュリティ脆弱性管理は重要な業務です。
ITニュースでみつけたからやるではなく、どのシステムの脆弱性をどのタイミングでどのように確認するか定義しておきましょう。
ベンダーサイトで特定製品の脆弱性情報をメール通知するように設定したり、Google Alertsを活用してプロアクティブに検知する方法も検討しましょう。
脆弱性をスキャンする有償ツールを導入するという方法もあります。
3. 目標とKPIの明確化
情報システム部は売上、利益に直結しないからと目標とKPIにはあまり関係がないと考えがちですが、組織に属している以上は目標を定め、目標を追って活動する必要があります。
目標を定めたらその目標を達成するためのKPI(Key Performance Indicatorの略で組織の目標達成度を測るための指標)が何なのかを明確にしましょう。
ここでのKPIは1つではなく、3~5つ程度設定しておくことをお勧めします。
ただし、KPIは複数設定したとしても全てのKPIを平等に追いかけるのではなく、目標達成への影響が大きいと判断したものを優先的に対策します。
途中でこのKPIが目標達成に大きく影響しないと判断したら別のKPIに切り替えてみることも必要です。
情報システム部のKPIの例としては次のようなものがあります。
・プロジェクト納期達成率:計画された期限内に完了したプロジェクトの割合
・解決課題スコア:解決した課題の難度と達成数によるスコア
・コスト削減率:年間のIT関連コストを削減した割合
・ユーザー問合せ削減率:ユーザーからの問合せ数の削減率。Q&A作成や分かりやすいマニュアルなどで削減する。
4. メンバー育成の明確化
情報システム部は導入したシステムによって構成されているのではなく、メンバーによって構成されていることを意識すべきです。
システムを選定するのもシステムを運用して活用するのもメンバーの力量に依るところが大きいのです。
このため、メンバーの育成については緊急課題ではないものの最重要課題と考えるべきで十分な予算と時間をかけていただきたいのです。
情報システム部においてはメンバーが頻繁に入れ替わることはシステムの安定運用に支障を来す可能性があります。
どんなに優秀なメンバーを新しく採用するよりもそのシステムの過去経緯(構築時の問題、その後に発生した問題、運用方法など)やその情報システム部門での業務の進め方を熟知しているメンバーの方が良いのです。
定期的な1on1を実施するなどでメンバーの描いているキャリアが現在の業務と合っているか確認するだけでも離職の機会を大幅に削減することが出来ます。
積極的にセミナー参加や勉強会への参加を推奨し、メンバー自身が業界動向や新技術獲得に意欲が持てるようにしていただきたいと思います。
ここまでで情報システム部門を効率的にマネジメントするために実践いただきたい4つのルール、仕組み化についてご紹介しました。
日々の業務で追われていることと思いますが、半年先、1年先を見据えてこれらのことを是非実践していただければと思います。