SIerは工数見積もりをちょろまかしてはいけない
SIerのプリセールスとして活動していた頃、マネージャーの方から厳しく言われたことの1つに「工数をちょろまかすな」というものがありました。
SIerでの請負作業の工数積算は多くの場合、設計、構築、成果物、運用引継ぎなどの各フェーズ(請負作業の場合、要件定義は見積もり段階で完了させる必要があります)で細かく工数を算出したものを積み上げて作成します。
プリセールスとして受注したい案件になると、受注したいがために積算する工数が甘くなって少なく見積もってしまうことがありました。
そんな時に当時のマネージャーからは「工数をちょろいまかすな」と厳しく指摘されました。
見積もりの精度というのは過去の同様案件の見積もり工数と受注した案件の実稼働工数を考慮することで精度が高まっていきます。
この時に受注したいからという感情を工数に積算してしまっては将来の工数積算の精度が狂ってしまいます。
感情を抜きにして正しい工数を積算することを徹底しましょうということです。
どうしても受注したい案件があった場合、そのマネージャーのやり方としては正しい工数を積算した上で関係者と協議の上、どのような理由でどこまで値引きをするのかを決めるというスタイルでした。
確かにその場合は将来の工数積算の精度には影響がありません。
また、逆にリスクがある案件の場合は本来の工数とは別にリスク分を上乗せし、備考欄などに記載しておきます。
金融業界であれば〇倍、大手企業であれば〇倍、他のSIer様相手であれば〇倍といった形です。
このように細かい工数を精確に積算できるようになると、商談の場でお客様からここを変更したらいくらになりますか?という質問を受けたとしてもその場で回答することが可能です。
勿論、「社内で承認を取る必要がありますが〇万以上の増額はないと思います」といったように多めに回答しておきます。
ちょっとしたことでも社内に帰って検討しますではあまりお客様の信用は得にくいのです。
ここまででSIerは工数見積もりをちょろまかしてはいけないという内容でお話をしてきました。
SIerのエンジニアにとっては工数見積もりなんか作っているよりは技術に集中した方がよいと考える方も少なくないと思いますが、私は出来るだけ早い段階で見積もり作成に関わった方がよいと考えています。
工数見積もりを経験することによってプロジェクト全体を俯瞰することができます。
具体的には、設計、構築、成果物、運用引継ぎの各フェーズでどんなタスクがどんなスケジュールで必要になるのか、どんなリスクがあるのかを把握できるようになるのです。
まだ工数見積もりを経験していないエンジニアの方には是非挑戦していただきたいと思います。